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今日紹介させていただく小説は、安戸悠太の文藝賞受賞作『おひるのたびにさようなら』です。

この小説は、真司が会社の先輩二人とあるゲームをしている。
そのゲームとは、会社を抜け出し耳鼻咽喉科の待合室で昼ドラを見て、その内容を先輩二人に伝えるというもの。
このゲームの面白いのは、実はそのテレビ、音声が出てなくて、真司が先輩に伝えている内容は画面から想像する勝手な解釈であるというところ。

先輩二人は彼の必死な説明を聞いて楽しんでいる。(真司だけ正解を知らない)
このゲームの特徴が、この小説の根本であり特徴でもある。

この作品の面白いところは、3つの軸(1つは一回しか出てこない)が並行して描かれるが、一向に交わらないところである。
何故なら、制作者、ドラマ、視聴者と縦の関係になってるからだ。

話を追うのに、人物に感情移入する人には少し読みにくいかもしれません。
この小説は勝手に向こうから話してくれる《聴く小説》です。
なにせ真司が必死に説明してくれるんですから。
そー考えれば読みやすくなるはず。


真司の説明を映画学の画面分析の手法で表現してるのが安戸氏らしい。
(僕は彼と映画学の授業で出会った)

印象的な点を何点か。

擬音で場面転換をするところは、演劇や映画のように感じられる。
個人的に、音で階段を走ってるのを表現していた所が印象的で好き。

もう一つは不思議な人物の動き。
思わず、読みながら実践してしまいます。

全く共通点のない人物達が同じ動きをしているところには注目したい。


小説を読んでると、こうなったらいいのになぁ、とか別の展開を想像することが沢山あります。

そんな気持ちを小説にしたものが『おひるのたびにさようなら』だと僕は考えてます。

ゲームには終わりがくる、それが現実です。でもここに書かれた結末は、一つのパターンでしかなく、正解は無限にある。
正解が無限ということは、正解はなくて、可能性だけが溢れてるともとれる。
そんな現実逃避にも似た希望を信じたくなる作品になっている。

少しは興味を持っていただけたでしょうか?
皆さんもこの本を読んで思う存分「もしかしたら」を探してみては。


安戸氏と二人でこの小説についてもっと多くを話ました。これはその一部です。(友人で好意的に読んでくれたのは君だけと笑顔でジョークを言ったりしていた)

彼は小説の可能性を広げたいと、いろんなものを取り入れ文字で表現しようとしています。

また小説での新たな表現を期待せずにはいられません。

安戸悠太の作品が多くの人に読まれることを!


写真は11月19日発売日、渋谷ブックファーストにて。

by全



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★確かに
NAME: ともはる
【僕】という存在に完全に感情移入してしまう吉田に取っては少々読みにくい本ではありましたね。

最初は特に本の形態に慣れるのに時間がかかったのを覚えてます。


ぶつ切りに跳ぶ世界、三・四点をクルクル。
繋がってるみたいで、やはり違う。

外から見てるのを、またその外から覗いてる感じ。

ハタから見れば、結局は自分の思い込みだったりするってことの方が多いのかもしれませんね。(希望的観測とでも言いましょうか)

かくゆうこの本を読んでいる僕も誰かに覗かれてるのかもしれませんね。
2008/12/09(Tue)07:57:16 編集
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