かもめのメモか

私の・歩いた・地面に・接吻
なぜそんな・そんなことぉ。私なんか！
殺されても文句は、殺されても文句はないのにぃ。すっかり
へとへとぉ。一息つきたい・一息。殺して！　私はかもめ。
いや違う！・そうじゃない！・私は……、私は・そう。私は女優。

はっ……、あの人……、あの人も来ている。そうなのね！？・どこ！？
あの人は、芝居というものを信用してない・いつも私の夢を笑ってた。
それで私も、段々信念が失せて、気落ちしてしまった。
その上・恋の苦労。嫉妬。赤ちゃんのことでしょっちゅうびくびく。
そう！　しょっちゅう！　しょっちゅう、暑中お見舞い・お見舞い！？
私は気違いじゃない！・ただ、ゆとりのない・窮屈な、窮屈な女に
なっただけ。気違いなんかじゃない！　でたらめな、でたらめな演技していたの。
両手の扱い方知らず、舞台で立つことままならず。

あなたには分からない。酷い演技をやってるなと感じる心持ち、殺して！　私はかもめ。
いや違う！・そうじゃない！　ねえ、憶えてる？
あなた・撃ったでしょ？　殺したでしょ？　あのかもめ。ちょっとした短編の題材。
ふとやってきた男が、その娘を見て、
退屈紛れに破滅……。そんな話。そういう話。
ううん、これでもない。何・話してたんだっけ……。
そう・舞台、舞台のことだった。今じゃ私、そんな風じゃない。
楽しく、喜び勇んで役を演じ、自分が素晴らしく感じる。
だって私、もう一人前。本物の女優なの。



一つ、思ふのは狂ってるのは彼女か俺か。
かもめのニーナは殺されにきた、殺してほしかったんだ。
愛をもって殺してやることが彼には出来なかった。
俺には出来るだろうか。



俺のニーナは言った。
ふとやってきた男が、その娘を見て、退屈紛れに破滅させてしまった。
破滅の先に何があると思う？
破滅→滅亡→呆然→善悪→悪意　
世界は悪意に満ちているんだわ。

さようなら……

彼女去った後、こう俺はつぶやく

ニーナ、違うよ、
世界は善意に満ちているんだ

こめかみに銃を当て
きっと俺は笑顔で
SAYONARAするんだ



by RADY KESHY