ウグイスのなく日

まだ微かな肌寒さを感じる灰色がかった空の下。

僕は信号待ちをしている。
前に進まない僕の背中に、遠くから声が迫ってきた。

綺麗な声。

ウグイスだ。

ホーホケキョ、ホーホケキョ。
ウグイスは僕に話しかける。
ホーホケキョ、ホーホケキョ…お願いします

優しい顔を向けてくる。

僕は表情をかえず、少しウグイスに振りかえる。

すると
ホーホケキョ、ホーホケキョ。
僕を見つめ、手をふった。
僕は彼女に笑顔をかえす。

彼女は笑いながら、手のふりをはやめた。

すると、歩くよりもずっと力強い動きで、僕の前を過ぎていった。

決戦の、日まで啼く泣く、ウグイス嬢。

僕は信号を渡った。

by全